大判例

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広島高等裁判所 昭和26年(う)549号 判決

論旨は被告人が共産党佐伯地区委員会の結成された際入党申込を為し同委員会の承認によつて爾後その党員となつたこと(本件公訴事実第一に対し原審の認定した事実)或は五日市細胞が結成され被告人がその構成員になつたこと(本件控訴事実第二に対し原審の認定した事実)はいづれも右各結成行為についての指導的役割を演じた行為ではないにしても、被告人等各構成員となつた者の行為が寄り集つて委員会や細胞が出来上つたのであるから、矢張り各自結成行為をなしたものと見るべきであつて、指導的役割を演じた者の行為との間には重要さの程度の差があるに過ぎないと考えるべきであるのに、原審は被告人が右委員会又は細胞の結成行為をなしたものでないと認定したのは公訴事実を正当に理解せず且事実を誤認したものであるというのである。

委員会又は細胞が構成される場合各自の参加行為(積極的な参加申込又は参加勧誘に対する承諾)が結合して成るものであることは所論の通りであつて、斯る行為を目して論旨のように「結成行為」と称することは自由であるけれども此のような行為の外に斯る場合に委員会や細胞の構成につき党員の獲得、党員間の連絡等所謂指導的役割を演じ、其の成立について推進力原動力となつて活動し、以て委員会や細胞の結成を成就せしめる者をこそ結成行為者であるというのが正当な用語法というべく原判決が被告人が前記結成行為をなしたものと認め難いと判示して居るのは此の意味における結成行為を指すものであることは判文上明らかであり、単に入党申込をして承認されたとか、細胞結成に同意したとかいうような行為は自分だけの進退についての受動的行為に過ぎない点において右説示の結成行為が委員会又は細胞全体に関する積極的行動たると質的にも相異るものであつて単に程度の差に過ぎないというようなものではない。

第一点の(二)について。

被告人の前記委員会及び細胞に関する行為が前段説示の通りであるとするならば、論旨のように之を政治活動であるとするのは当らない。蓋し単に党員となり或は細胞の構成分子となるということは直ちに以て共産党の政治上の主義、綱領、施策又は活動の企図決定に参与、推進、支持すること等によつて現実の政治に影響を与えると認められる行動には該らないと解するのが相当であり、斯く解することは論旨に指摘の判例の趣旨にも反しない。

(中略)

弁護人の論旨について。

第一点は、原判示第二、第三、の事実における被告人の行動は経済上の活動であつて政治上の活動と見るべきではない、というのである。然し乍ら納税者が自分に課せられた税金の不当に重いことを主張してその是正軽減を求めることは勿論何人も為し得る経済上の活動であり、追放令該当者と雖も当然之を為し得るところである。けれども、本件における被告人の行動の如く、他の多くの納税者につきその不服の点を調査し、多数を指導してその力を結集し所謂減税又は再審査の運動をなすことは最早純然たる経済活動ではなく、経済問題についての政治活動であると認めなければならない。原審の認定は正当であり、論旨は当つていない。

第二点は要するに本件の如き頒布行為は覚書に所謂論議というに該当せず且本件文書の内容は朝鮮における動乱に関する批判であつて日本における占領目的を害するものではないというに帰着する。

然し乍ら所謂論議とは連合国に対する虚偽又は破壊的な批判風説を通常の議論、演説等により第三者に発表する場合のみならず、ポスター、壁新聞等により掲示し或はビラ、文書等に記載して頒布する場合をも含むと解することが覚書の全趣旨に徴し正当である。

尚本件文書の内容が朝鮮における動乱に言及したものであることは所論の通りであるけれども仔細にその内容を検討すれば更に連合軍の朝鮮における行動を以て「朝鮮問題に名を藉りて日本における軍事基地設定を合理化するための陰謀である。」となし「社会主義人民民主主義諸国に対する侵略基地としての日本の兵器廠化反対」「日本の全愛国者は…………………朝鮮人民の解放闘争を支持し、日本民族解放のための民主民族戦線に結集せよ」と云つて居るのは明らかに連合軍の日本における行動に対する虚偽乃至破壊的批判を論議したものであり日本の占領目的に有害な行為であることは論を俟たないところである。此の点の論旨も理由がない。

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